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株式会社J社

訴える

その日大月は休みだった。

6人は牟田口課長代理へ訴え出ることにした。

メンバーは自分を入れた社員2人、木下さん含むパート4人の構成

ぞろぞろと牟田口の前にみんなで集まり会議室で話がしたいと促した。

牟田口はすぐに同意し全員で会議室へ。

会議室へ着くと牟田口は足が短いのに深く腰掛けふんぞり返って座った。

牟田口:どうしました?

木下さんはあまり饒舌でない…

なのでもう一人のパートの小野田さんが口を開いた

小野田:牟田口課長、大月主事のことで。

牟田口:だいたい分かりますよ!

小野田:大月主事は人に対しての言い方が悪過ぎます!!先日の木下さんへの言い方は特にひどかったです。それに人を監視する。本当に不快です!!

牟田口:分かりました。この件は一回私に預からせて下さい。他にも不満があればメールでも良いので送っておいて下さい。

大人数で訴えたのでさすがに牟田口は動かざるを得ないであろう。そもそもこの課のトップは牟田口なのだから(課長職の人は不在のため)。ここまで動かなかった罪は重い。しかも本人は『だいたい分かりますよ!』と発言していた。分かっていたのになぜ動かない…

その後15:00になりパートの人は帰宅すると牟田口に社員だけ集められた。

牟田口:このことはオオゴトにしないで下さい。まずは私が大月主事と話しますから…

もう一人の社員:今回のことは(大月のパワハラを)分かってて泳がしてたってことですよね?

牟田口:そうですよ、もちろん!!(←得意気)彼は人に対しての言い方がよろしくないところがある。物言いが悪い。ここを直さないといけない。まずは常務に話を通して(事業所の)次長にも話をしてみるよ。彼には来週話をするよ。週末にこんな話をしたら気分悪いだろうからね。

課を預かる者としては当然だろう。片方の言い分だけを呑んで注意する訳にはいかない。中立の立場を取るいい上司なのかな…ふとそういう考えも浮かんだ。

ただ一方で言い方の問題ではないと思った。そういう物言いをする根幹には人を馬鹿にしている見下している性根があるのだから。性根から直さない限り大月は絶対治らない。頭で考えてコントロールしての発言であれば改善の余地があろう。

さらに牟田口が大月の心情を一番に考えている点はかなり引っかかる要素だ。

帰宅するとパートの小野田さんから連絡が来る。

『牟田口からメールが来た。内容は“皆さん家庭のある身でありながら仕事に打ち込んでいるので色々大変だと思う。職場は働きにやすいものでなければならないと私は思っています。今回のようにSOSを出して頂けると私の方でも手の打ちようがあるので大変助かる。ただ(自分を含む社員の)二人に知られるたのはマズかった。今後は私の方で彼(大月)と話していくので皆さんは他言しないように注意してください”と来た』

とのことだった。

あっ、コイツ、話を聞く態度を見せるフリして一番の主目的は火消しに必死と判明する。

大月の物言いが本当に問題であるという認識でそれを改善したいのであれば、①大月の悪かったところを列挙する②大月に注意する謝罪を促す方向や約束が出てくるはずである。百歩譲って話し合いますであれば前進する可能性はあるだろう。しかし実際は二方向(社員とパート)に他言は無用と飛び火しないようにすることに全力。一見話を聞いているが抽象的な(家庭のある身でうんたらこうたら)話で”実害や事実”についての話はない。

大月は部下なので牟田口にそういう態度を見せたことがないという可能性はない。エクセルの件は直接話をしているし狭い課の中でのやりとりなのだから気付ないはずはない。もう一つの可能性。それは牟田口自身、受け取り方が鈍感でほんとうに分かってない可能性。これも否定される。なぜなら牟田口自身、大月の態度物言いに対してキレたことがあるからだ。結局事が大きくならないようならないに全力を注いでいるのだ。大月と誰か一人の個人の問題であればそれでも解決する可能性はあるだろう。しかし”課“全体を挙げての訴えなのだからただいたずらに不満を助長していくこととなる。